豊能障害者労働センター積木屋紹介

◆今から43年前、障害がある人もない人も対等に共に働くことで豊かな人間関係をめざす活動を始めて、1982年に市民事業として豊能障害者労働センターをスタートされました。その豊能障害者労働センターで40年ほど前から健常者スタッフとして仕事をされている藤田祐子さんにお話を伺いました。


◆障害者も社会の一員として対等に持続可能な生活が出来るようになることを目指して。
【藤田】日本では、障害者が働くということがまだまだ根付いていません。福祉というのは、「障害者が働くのは『生き甲斐』『居場所づくり』であって、お金(賃金)は伴わなくて当たり前」という世界なんです。それは、私たちの活動が始まる50年近く前も、今も。それがおかしいんじゃないかという声で始まったのがこの事業であって、いわば社会的な運動なんですよ。社会の中で税金を払ったり家賃を払ったり、飲み食いをしたりという日常生活をしてお金を落とす社会の循環に障害者一人一人がちゃんと位置づけられていくことをめざしているんです。

◆自治体に声を届けて、箕面市が障害者の働く権利を保障する「障害者事業所制度」に取り組み、全国で初めて障害者と健全者が対等に働き経営する「社会的雇用」が始まりました。
【藤田】福祉的就労の場でもみんな働いているのに賃金は伴わなくて、でも助成金は出ているんですよ。その助成金は健常者と言われている障害を持っていない人(支援員)のお給料になる一方、障害者への工賃は非常に少ない。私たちの取り組みでは障害者の賃金もちゃんと保証するというのが大前提で、それをずっと箕面市で言ってきた。そうやって生まれた障害者事業所制度というのは全国で唯一、箕面市だけです。市が障害者の最低賃金を保障する画期的な制度なんです。

◆健常者スタッフも障害者スタッフも同じ財布のお金を分け合って社会の中で生きていく大切さ。
【藤田】「財布は一つ」という私たちの大前提があって、売上も助成金も全部一つの財布に入れて分け合う。一人一人の生活に見合った形でお金を分け合うのが基本です。ほとんど社会と接することのない(障害者)事業所のように一つのところにこもって何かをするんじゃなく、自ら稼ぐためにお店も持って、社会の中できちんと位置付けていく。当初からお店というか外へ出ていくことが私たちの基本で、重度の障害者が社会に出てこそ、街の人たちと共有できることがあるから。うちには視覚障害から聴覚障害、精神障害、知的障害、重度身体障害までいろんな障害を持っている人がいます。それぞれが自分の担えることをやりながら、補い合って事業をしています。

◆みんなで稼ぐ「バザー」を被災した障害者支援につなげた。
【藤田】バザーは当初からメープルホールでやっていたんですが、阪神淡路大震災の時、神戸にいる障害者の姿が全く見えなかったというのがあって。被災した障害者がもう一度その土地で生きていけるように、バザーでお金を作って届けようと決めたんです。被災障害者支援バザーと銘打って、売上金を被災障害者に届けますということを機関誌『積木』やチラシなどでバーンと打ち出しました。そうしたらものすごい反響があって、バザーの売り上げがびっくりするほどの額になりました。そこから経費を除いたほとんどの額を被災地に渡すことができたんです。

◆『ゆめ風基金』へのつながりからリサイクルショップ事業へ。
【藤田】『ゆめ風基金』という、阪神淡路大震災が起こった時に立ち上がった被災障害者支援のNPOがあります。そこに届けて実際に被災障害者の生活の場に届くお金になったんです。その後もひっきりなしにバザー用品が来ました。ちっちゃな団体ですけど、そういう活動をして外に向かっている団体なんやということをいろんな人が知ってくれたみたいで、ほならこれ渡そかといった、すごい連鎖ができてきたんですね。じゃあもうバザーみたいな大きなイベントではなくて、この箕面の町で私達がちゃんと生きていくために使わせてもらおうと思って、『くるりん』というリサイクルショップを初めて作りました。それがリサイクル事業の始まりです。

◆一大イベント事業「みんなでつくる春のバザー」から、コロナを経て規模を見直した。
【藤田】その頃はバブルの頃でもあって、ものすごい数のバザー品が来ました。バザー会場では、外で他団体のバザーもやったり、焼きそばを焼いたり、歌を歌ったり。私たちが発信する場所であり、受け取る場所でもある一大イベントでした。それを阪神淡路大震からずっとやり続けていたんです。ところがだんだん物が来なくなって、先細りしているところにコロナがあった。そのせいで、もう以前のような大規模なバザーはできなくなりました。集まる品物自体も少なくなって。バザーを始めた頃、リサイクルショップはほとんど無かったんですけど、今はいろんなところで買取(リサイクル)ショップをやってるでしょ。だからそちらの方に持って行かれる方も多くて。2023年からは、年に2回か3回ちっちゃなバザーをやろうということで、メイプルホールのロビーと玄関前だけに限ってやったのが『笑笑(わらわら)バザー』という今回(11月15日)のバザーです。
現在の事業は、バザーの他に『ピンクポコペン』『くるりん』『ぶらぼう』『ゆっくり』というリサイクルショップ4店舗と、昨年11月にオープンしたランチカフェ『虹のうつわ』の運営。そして、通信販売事業でカレンダーやオリジナルTシャツ、自然栽培茶、無添加食品などを販売したり、市広報の点訳業務などを行っています。

◆お話を伺っていて、自分たちで工夫を凝らし、一般就労でもなく福祉施設でもない対等に働く場を広げられている活動。それが「社会的雇用」という地域で生まれた持続可能な社会に向けての大切な環境になっているのだと感じました。



写真:11月15日『笑笑バザー』より

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